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「メガネのお世話になるようになって、もう10年になります。
メガネは、世界を見据えるためにどうしても必要不可欠です。
メガネを使わずに生きている人が、とても、羨ましい。
気付いてしまった僕は、もう、二度と裸眼には戻れないのです」
アイピット目白
2002.8/2(金) 〜 2002.8/4(日)
5ステージ
井内勇希 鈴木朋美 増子直子 山内翔 大澤遊 五十嵐幸司 植田玲奈 後藤郁美 中野明日子
西川康太郎(劇団コーヒー牛乳)
脚本・演出:古川貴義
舞台美術:西多恵子
大道具:原千香子
照明:野村昌司
音響:福田真由美
衣裳・小道具:今村智美 栗山佳代子
スライドオペレーター:永井良
舞台監督:マグロ
特殊眼鏡収集課:小浦知佳
制作:安田有希子 上栗陽子 西山紗耶歌
前売:1,500円 / 当日:1,800円
「偽善」をキーワードに、親友の男友達「おかしな二人」、祖母が暗殺された姉妹「鳥府姉妹」、蒲田行進曲みたいな連続テレビ小説「カタナで人を斬る100の方法」、この3種類の話が交錯、連関しながら同時進行する。
「おかしな二人」
幼稚園からの腐れ縁の白杉良介(井内勇希)と太田黒潔(大澤遊)は、大学に入っても家で一緒にゲームをしたりしている。それは、流行のオンラインゲーム「Color The World」だ。だらだらしている内、太田黒と白杉の母の悪ノリにより、白杉はリエ子に恋の告白をすることになる。しかし、リエ子は言う。「あたし、太田黒君のことが好きなの。太田黒君、付き合って」「いいとも」と、太田黒。
憤懣やるかたない白杉はゲーム中、仲間を探しに来た酒場で、初心者でチャットに付いていけないパステルバッヂ(増子直子)に出会う。
一緒に旅をするうちに、気狂いじみた魔法使いの親子を自滅させたり、匂いに敏感な道具屋に気に入られたり、パステルバッヂに淡い恋心を抱いたりするようになる。
やがて、偶然とは言え、破壊神アンラマンユと遭遇する。ピンチに陥る。だが、そこへ太田黒が現れる。ゲーム中でも本名の、太田黒。太田黒は強い。太田黒は武闘家だ。太田黒は背が高い。惚れ惚れするパステルバッヂ。合体して能力が飛躍的にアップした破壊神だったが、3人で協力して何とか倒すことに成功。一息ついたパステルバッヂは、こう言った。「今度、オフ会しません?」
「鳥府姉妹」
京子(中野明日子)とリエ子(後藤郁美)の姉妹には、祖母が居ない。母の話では、暗殺されたらしい。合点のいかない京子は、どうしても真相を突き止めたいと思うようになる。そんな京子の気持ちをかけらも察せず、父の作った等身大ザクと一緒に「カタナで人を斬る100の方法」ごっこをし続ける馬鹿な妹リエ子。
京子は、暗殺が事実であるということ、そして犯人は刑期を終えて娑婆に出ていること、さらに犯人の居所までも調べ上げた。これからその犯人に会いに行ってみるよ、と誘うが、「カタナで人を斬る100の方法」ごっこをし続ける馬鹿な妹リエ子。
犯人、輪島(五十嵐幸司)は、骨董品屋を営んでいた。その店には何故か、京子とリエ子の祖母アグネス(植田玲奈)の等身大の銅像があった。輪島と仲良くなった京子は、暗殺について問い質す。そして次に来た時までに暗殺の決定的瞬間のビデオを探しておいて貰えることになった。
ビデオ上映当日、輪島の骨董品屋はビデオテープ屋になっていた。問題のテープが見つからないのだ。京子と輪島は散乱するテープの山の中から必死で探すが、それっぽいものを再生しても、変な体操番組や、「ちゃんこ」しか言えない力士のインタビューなど、的外れなものばかり。
とそこへ、「オフ会なんか行かねえ」と拗ねて街をぶらついていた白杉が、気まぐれで入って来る。白杉が直感で拾ったビデオテープを再生してみると、まさにアグネス(植田玲奈)の演説のものだった。
「カタナで人を斬る100の方法」
大部屋俳優のミツル(山内翔)は、何本も主演映画を持つスター欽ちゃん(西川康太郎)の付き人を務めていた。ミツルは欽ちゃんのことが大好きだ。いつも欽ちゃんの言うことは絶対だ。欽ちゃんが餃子の話をすれば、大好きだ、と話を合わせる。欽ちゃんが「でも餃子あんまり好きじゃねぇんだ」と言えば、「あんなのどこが美味いんだよ」と話を合わせる。ミツルは馬鹿ではないが、欽ちゃん馬鹿だった。
そんなミツルに、結婚話が持ち上がる。もちろん持って来てくれたのは大好きな欽ちゃんだ。だが、それは何と、欽ちゃんの恋人である小夏と結婚したらどうか、というものだった。ミツルは迷った。しかし、小夏の「結婚しよ?」の一言で心は決まった。
ミツルは欽ちゃんのことは好きだが、小夏(鈴木朋美)のことはもっと好きだった。でも、もともと欽ちゃんの彼女だし、照れもあり、いつも美味く喋れないのであった。そんな小夏から、結婚にはお金がかかること、そして小夏のお腹の中には欽ちゃんの子供が宿っていることを聞かされるミツル。衝撃である。そこへ現れる欽ちゃん。渡りに船とばかりに、大金が稼げる仕事を持ってきてくれる。それはあの新撰組池田屋事件のシーン、スタントマンでも半死半生になるという、大階段を転げ落ちる通称「階段落ち」だった。
「Final Act」
アグネスの暗殺、ミツルの階段落ち、オフ会が同時に描かれ、それぞれの偽善の結果が提示される。
初めて箱庭から出た作品。
 今まで箱の中、箱の中、にこだわってきたのですが、たまには外を、と。だからというわけではないが、初めて客演を招いた作品。
 つーか長いですね、あらすじが。まあ、過去2本の上演時間が一時間ちょっとだったのに対し、今回は二時間弱あったので当然といえば当然なのですが。あらすじは四つのシーンしかないように見えますが、実際は20数シーンもありました。それぞれのシーンが、繋がっているような、繋がっていないような感じで続いていきます。
 この公演は間奏曲ということで、本公演とはまったく雰囲気の違う芝居にしたかった。今までやりたくてもやれなかったことや、やったらどうなるんだろう、ってことを中心に作ってみました。だから装置は抽象、衣裳も抽象、小道具はメガネのみ。場転も山盛り。一人三役以上。そして一番違うのは、台本芝居ではないということ。役者のエチュードを見て、良いものを拾って、構成して、時々穴埋めして、という作業を経て完成しました。
 何故番外公演なのか?という問いに答えるのは簡単です。まず、上記のような作り方をしてみたかったということ。大学に入って様々な芝居に触れて、最も試してみたいと思った手法がそれだったのです。神様プロデュースの演出助手をさせて貰ったことも大きい。そしてもう一つ、ただの台本芝居じゃ、僕の世界観に役者の方々を当てはめているに過ぎなくて、役者それぞれの固有の世界観が表出しにくいということ。これはずっと悩んでいたことでした。あるいは、古川貴義が七人出て演じた方が面白いんじゃねぇの?って。本当に七人出てきてやられたら気持ち悪いし、現実的にまず不可能なことなのですが、要はそういうことなのです。故の、番外公演。
 今回念頭に置いたものは、「いい人」でした。いい人、と人は言うけれど、お前が思ってるほど俺はいい奴じゃねぇぞ、かいかぶるな。という、僕にしては珍しい位はっきりしたテーマ。その、自分はそんなに良い奴じゃないよ、ということを言えた人や言えなかった人達が主人公。
 あと、メガネ。メガネメガネ。僕はまだメガネ歴四年目ですが、もう、あれなんですよね、メガネの視界に慣れちゃってるんですよ。初めてメガネをかけたとき、何だこの視界の狭さは!って驚いたものなんですが、今はもう普通。初めての感覚は徐々に麻痺していき、やがて当然の感覚、いや、感覚として意識しない、無意識の域にまで達してしまう。そういう怖さとか、初めての感覚を忘れるべきこととか、忘れるべきではないこととか、その辺を、ね。うん。
 劇中に一度だけ、とても良いメガネが登場します。それはサングラスを更に黒く塗った様なメガネで、周りのものは何もかも黒く見えます。それにより、黒人と白人の区別がつかなくなるから差別がなくなる、みんなもこれを掛けよう、という宗教の教祖がアグネスだったわけで。しかし、アグネスは気付いてしまったんですね。このメガネは、自分の心に差別意識があるから作れたんだと。まだ気付いて居ない人、つまりもとから差別意識がない人には思いつきもしなかったものなんだと。
 散々解説してしまいました。嫌だな。格好悪いな。でもこの位書かないと、観てない人には、いや観てくれた人にもさっぱりな芝居だったんじゃないかと思って。
 好評だったのは、やはり欽ちゃん(西川康太郎)とミツル(山内翔)の掛け合いのシーン。具体的に説明するのが凄く困難なのですが、何度観ても面白かった。稽古場で嫌という程見ていたにも関わらず、劇場で5ステージ観て全部笑ってしまった。演出する人間としてそれはどうかと思うが、仕方ない。面白かったんだから。それと合体シーンね。魔法使いフニクリ(後藤郁美) とその息子ネクラ(山内翔)、地獄の王(鈴木朋美)と地獄の帝(中野明日子)が四対合体を果たし、破壊神アンラマンユになるところ。これも凄い。気持ち悪い。一日このシーンの練習だけで終わる稽古があった。そのくらい凄い。組み体操やプロレスの技術をふんだんに盛り込んだ合体でした。正面から見ると本当に気持ち悪い。太田黒潔(大澤遊)と白杉の母(鈴木朋美)の無駄なスローモーションとか、酒場の女主人(植田玲奈)のセクシー過ぎて腹が立つ踊りとか、何をやってもコントのノリになってしまう店主(五十嵐幸司)とか、付き人・余興(井内勇希)の余興とか、気持ち悪さを前面に押し出した演技フレームのパステルバッヂ(増子直子)とか。他にも、世の中タブー講座、出来ないくせに殺陣、4m四方の平舞台での階段落ちなど、見所満載やりたい放題。あー、楽しかったー。

そんな、お芝居でした。

追記。
ご年配の方からの質問が多かった、オフ会について説明を。
オフ会・・・Web上での知り合いに過ぎなかった人々が、直接会うこと。また、そのパーティーのこと。
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